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オークス民事再生手続に関する要請書

オークス民事再生手続に関する要請書

平成20年10月8日

沖縄県司法書士会 会長仲村弘

本年7月30日那覇地裁において、株式会社オークス(以下、単に「オークス」という。)の民事再生手続開始決定(平成20年(再)第5号)がなされました。

那覇市に本店を置く県内最大手のオークスのクレジット会員は24 万人、貸金利用者は約4万5000人といわれています。キャッシングを行っている信販会社の民事再生は、おそらく全国でも初めてであり、今後の同様事案のリーディングケースとして全国的にも関心を集めています。

同オークスの民事再生手続に関する債権届出期限(9 月26 日)が経過しましたが、現在まで債権届出を行っている県民は千数百人ほどだと予想され、最低でも1万人以上はいると思われる過払債権者数から比較すると届出債権者数は極めて少数であるといわざるを得ません。

当会においては、オークスの顧客に対して法律相談に応ずべく、オークスの再生手続開始決定以降、相談体制を拡充し連日相談に応じていますが、当会の専用電話は鳴りやまず、9月26日までの相談電話件数は総計1300件を超えています。また、26日以降も相談の電話は絶えず、日々その相談が相次いでいます。

その原因としては、オークスの場合、同様に民事再生を行ったクレディア、アエルとは違い、貸金のみでも複数取引があり、クレジット取引も行っている利用者が多数であり、計算が複雑となるにもかかわらず届出期間が充分ではなかったこと、オークス自身の再生手続についての告知不足(8月5日に新聞広告2 紙各一回、自社広報誌9月号に一回掲載のみ)であったことが最大の要因であると考えます。

また、26日以降の相談の内容としては、①オークスの民事再生は報道で知っていたが、利息制限法制限利率で引き直し計算結果によっては過払いが生じ債権届出が必要になることを知らなかった方、②個人信用登録情報に異動情報等が記載されることによる不利益を心配し、これまで相談できなかった方、③オークス顧客自らが取引履歴の開示を行ったが、顧客自らは利息制限法制に基づく引き直し計算ができず、オークスからの再計算結果がまだ届かないので届出を行っていない方、オークスが提示した再計算結果に納得できないため専門家に依頼したいとの相談をされる方等があげられます。

更には、クレジット残高も含めた取引履歴に関して、26日直前に開示請求をした内の一定数が未だ開示がなされていないことや、実際の弁済額より少額の金額が記載された取引履歴が開示された事例も報告されています(オークスに確認済み)。開示された取引履歴のうち実際の弁済額より、少額の金額が記載されたが、その齟齬に気づかない方も一定数存在すると思われますが、その原因に関しては「不明」とのオークスの回答のみで、開示された内のどの程度の数の取引履歴に間違いがあるのか原因究明がなされておらず混乱に拍車をかけています。

ところで、平成18年1月13日最高裁判決(第二小法廷、平成16年(受)第1518号)は、「期限の利益喪失特約の下で、債務者が、利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、特段の事情がない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということができない。」として、貸金業規制法第43条のみなし弁済規定の適用を否定しました。

オークスとオークスの顧客との制限利率超過の貸金取引の弁済はそもそも銀行預金からの引き落とし又は銀行ATMによる弁済であり、この最高裁判決以前にみなし弁済が成立する余地はないものと考えられます。その証左として、オークスはこれまで一度もみなし弁済を主張したことがありません。また、オークスが有する貸付債権についても、民事再生手続において財産価値を算定する必要があり、全顧客との取引につき利息制限法制限利率により計算を行い、オークスの債権債務を確定しなければなりません。

オークスの今般の民事再生申立に至る原因は、利息制限法制限利率を超過する利率による利息の過払金の返還が原因の一つであるとされていますが、オークス自身は、貸付債権に利息制限法が適用されることを認識したうえで、営業を続け、過払金返還に備えるために引当金も計上してきました。したがって、本来であれば、オークス自らが利息制限法の制限利率により引き直し計算をし、過払債権者となる顧客については「知れている債権者」として、公告すべき事項の送達を行うべきであり、知れている債権者として債権届出を促すことをしていない本件民事再生手続には大きな瑕疵が存在すると言わざるを得ません。

オークスの主な債権者は、10 数社の大口債権者(主に金融機関)と、最低でも1万人を上回る過払債権者といわれています。

大口債権者は、オークスに融資をし、貸付金利という利得を得てきたものであります。そして、大口債権者のほとんどは、オークスの顧客に対する貸金債権に関して、譲渡担保を設定しているとのことなので、大口債権者は、オークスの貸金債権の一部は本来支払義務のない利息制限法の制限利率を超過する利息を約定利息とする貸金取引であることを知っていたものと思われます。過払債権者のほとんどが生活資金として長年借入を行ってきた消費者であることを考えれば、オークスが広く県民に支持されつつ企業再生を図るうえでも、大口金融機関の債権放棄も含めた、過払債権者の救済を図ることが求められます。

そこで、オークスの民事再生手続に関して下記のとおり要請いたします。

 

  1. 債権届出期間を変更(延長)又は債権届出の追完の要件を緩和し、一人でも多くの過払債権者の参加を保障すること。
  2. 再生計画の策定では過払金返還を優先し、最大限の返還に努めること。
  3. 過払金の返還は生活費に直結することを考慮し、少額過払金については、全額返済するとの再生計画を策定すること。
  4. 債権届出期間までに相殺ができなかったオークス利用者に対しても相殺を認めること、又は再生計画において相殺がなされたと同様な結果を生じるような手当を行うこと。
  5. 認否書において再生債務者等が認めなかった場合でも、当該届出再生債権者にその旨を通知すること(通知がなされず、届出再生債権者は届出再生債権の認否結果を閲覧等により自分で確認しなければならないとすると、本来、知れている債権者として取り扱うべき過払債権者に対し過度の負担を強いる結果となることから)。
  6. 届出がされていない過払債権に関しては、自認する再生債権として、認否書へ記載すること、又はクレディアの再生同様、債権届出がなされなかった過払債権者に関しては、届出債権者と同様の弁済を行うなど再生計画において最大限の配慮を行うこと。

以上

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