司法書士のゆんたくコラムColumn

Vol1.「司法書士の社会的使命」

今年1月の全国で生活保護受給者が209万人を超え7カ月連続で過去最多を更新しました。ここ沖縄でも生活保護受給者は3万人を超えています。

 

まだまだ司法書士の一部ですが、生活保護申請の同行支援等の生活困窮者の支援活動の取り組みを行っています。

司法書士がなぜ生活保護申請の同行支援なのかと不思議に思われる方もいらっしゃるかも知れません。

 

しかし、司法書士はこれまで多重債務問題の解決に深く関わってきました。そのなかで、借金を解決したのにもかかわらず、そもそも生活自体が成り立たないほど困窮している方々が多くいます。

 

借金問題の解決は、あくまで生活再建のための手段であって、目的ではありません。

借金の解決だけではなく、経済的な問題、社会的な関係をめぐる問題、家族関係をめぐる問題、精神保健をめぐる問題等を複合的な問題を解決しなければならないことが多くあります。

そのためには、様々な制度を利用したり、関連機関と連携することが不可欠です。

 

多重債務問題に取り組む中で、司法書士は、「身近なくらしの法律家」として、「知った者の責任」として、まだまだ、不十分な部分もありますが、生活保護申請の同行支援等の生活困窮者の支援活動を取り組み始めたというわけです。

 

現在、社会保障費の増大や財政危機が論じられていますが、このようなときには、必ず自己責任論という向かい風が吹きます。

 

しかし、「何とかなったはずだ」と自己責任論を展開するとき、何ともならない現実を見ずに、単に突き放している場合が多くはないでしょうか。

 

このホームページにも掲載してありますが、沖縄県司法書士会が平成22年上半期に県下の新規破産申立件数464件中、118件を対象として実施したアンケートによると、破産時の平均収入が月15万円以下の割合が87%、借入原因は生活費84%、借金返済60%(複数回答)と共に大きな割合を占めています。ギャンブル等の遊行費が原因の破産は3%にしか過ぎません。

 

また、「無職・主婦層」、「パート・アルバイト」、「契約社員・その他」などの収入が不安定と思われる層での破産は全体の73.8%で、昨年の58.5%よりも大幅に増えています。特に「パート・アルバイト」の割合は34.1%で昨年の24.6%から増加しています。逆に昨年増加した「会社員」の割合は31.4%から12.7%に減少しています。非正規労働者の拡大により、社会的経済的弱者に借金苦が広がっていることが分かります。

 

このような調査報告からもわかるように、「何が貧困か」という問いを忘れるということは、「何が人間らしい暮らしか」という問いを忘れるということではないでしょうか。

 

「私たちは岩盤をコツコツとたたき続けるしかない。しかし岩にも「スジ」があり、職人はそのスジを見出して、より少ない力で岩盤を割る術を持つ。私たちもまた、そのスジを見つける眼力を鍛え続けていかなければならないだろう。」(湯浅誠著・「岩盤を穿つ」より)

 

「身近なくらしの法律家」を標榜する私たち司法書士は、絶えず何ができるのかを考え、研鑽し、行動していく責任があるといえます。

 

 

初回のゆんたくコラムということで、少々堅いテーマを取り上げましたが、今後は司法書士が伝えたいことや日常業務の風景など、みなさんに司法書士をより身近に感じていただけるテーマも取り上げていきたいと思います。ご期待下さい。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

ペンネーム:Deep Forest

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